S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
第1章 ふたりの時間
豹変まであと1時間
なんとなくだが、予覚はあった。
業務上の些細なやりとりのたびに、廊下で一瞬すれ違うたびに、ほんの少し目が合うたびに、なにか言いたげな表情を向けられていたから。その視線に、甘やかな熱が含まれている気がしていたから。
とはいえ、言葉にされたわけではない。必要以上に踏み込んでくることもない。もちろんこちらから踏み出すこともない。
だから二年前と同じ関係には戻らない。あの穏やかで愛おしい時間は、もう二度と得られない。
ならばあと少し。もう少しだけ時間が経てば、心のどこかで燻っているこの感情は、楽しかった思い出とともに綺麗に風化していくのだろう。
――そう、思ってたのに。
< 1 / 304 >