S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
和季は明里家の御曹司だ。仮に『社内恋愛禁止』の社則がなかったとしても、いずれ経営陣の一員となる和季と、たまたま指導を担当してもらっただけの後輩の紗夜がオープンに付き合うことは、さすがに難しかったと思う。
もちろんそれは、あれから二年が経過した今でも言えることだ。
だが和季は、それ自体はなんのハードルでもない、と考えているらしく、首を横に振ってため息をつくばかり。
「社則のせいで周りの目を気にしなきゃいけない恋愛なんて、つまらないだろ」
紗夜の傍に横たわってシーツに頬杖をついた和季が、紗夜の顔を覗き込みながら苦い笑みを零す。
「紗夜と過ごす時間をもっと増やして、たくさんデートして、色んなものを共有したかった。紗夜の『はじめての恋愛』を後ろめたいものにさせたことを、後悔してたんだ」
「……和季さん」
「別に、あえて宣言する必要はない。けど人に聞かれたときに『恋人だ』って言えない関係なんて、寂しいもんな」
ため息交じりの和季の落胆に、『そんなことを考えてたんだ』と驚いてしまう。
紗夜にとって和季がはじめての恋人であることは、付き合い始めた直後に紗夜の方から伝えていた。
そのときに『じゃあ、俺が色んなことを教えてやるから』と言われ、実際本当に色んなことを教えてもらったが、和季としてはまだまだ足りなかったという。