S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
独占欲は6トン超
和季と顔を合わせたときにどんな反応をすればいいのかわからなかった紗夜は、無意識のうちに彼との遭遇を避けるようになっていた。
朝の出勤時に鉢合わせないよう、一時間以上早く家を出る。夜もできるだけ早く家に帰り、夕食と入浴を済ませたら部屋の灯りを消して、極力音を立てないよう静かに過ごす。玄関のチャイムが鳴っても応じないし、電話にも出ない。メッセージには最低限の返答のみで、もちろん和季からの誘いはすべて断る。
無意識のうちに避ける、というよりも、徹底的に避けている、という方が近いだろう。
だが紗夜は現実を直視する勇気が持てないまま――そもそも、今さら現実を直視する必要があるとすら思えないまま、気づけば和季と女性の姿を目撃した日から、三日が経過していた。
仕事の勘は一日で取り戻し、次の日からはしっかりと頭を切り替えて、書類や数字の羅列と黙々と向き合うことができている。だがふと手が止まった瞬間に先日目撃したあの場面を思い出してしまい、またどんよりと落ち込んでしまう。
「……はぁ」
胸の内に渦巻く暗い気持ちを散らすために、同期の莉乃に少しでも話を聞いてもらいたい。いや、彼女の顔を見て他愛のない雑談をするだけでも、元気をもらえる気がする。
そんなことを考えながらお弁当箱が入ったランチバッグを手にオフィスを出たところで、リフレッシュルームへ入っていく陽太の姿を偶然発見した。
(あ、瀬戸くん……!)