S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

 階によって導入されている自動販売機の種類が異なるためか、陽太が所属する営業部があるのは四階にも関わらず、この三階で彼の姿を目にすることも多い。おそらく陽太が好んでいる飲み物が、三階の自販機にはあって四階の自販機にはないのだろう。

 その事情に気がついたのはつい最近だが、今日ここで陽太と遭遇する機会を得られたのはありがたい。

(明日のおでかけ、断らなきゃ……!)

 元々、土曜日の件は断ろうと思っていた。最初は前回も直前で断ってしまったことに申し訳なさを感じて、陽太の誘いを受けるつもりでいた。だが彼と話しているうちに和季への気持ちを自覚した紗夜は、結局、陽太の誘いは断る、という結論に至っていたのだ。

 しかし連絡をしようとした矢先に和季の婚約者が会社まで訪ねてきたことを知り、陽太への連絡が頭からすっかりと抜け落ちていた。そうこうしているうちに時間が経過し、とうとう約束の土曜日は明日、というタイミングになってしまった。

 またも直前でキャンセルすることになってしまうが、こんな沈んだ気持ちのまま、そして陽太に恋愛感情を向けられないとわかっていながら彼と会うのは、あまりにも失礼だ。

(もしも瀬戸くんの告白を受け入れたら、忘れられるのかな)

 一瞬、そんなずるい考えが脳裏を過る。

 未来がないと理解しながら和季を思い続けるぐらいなら、その気持ちは他の人へ向けるべきなのでは、と思ってしまう。

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