S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
その場で立ち尽くして固まった紗夜を見て、和季がくすくすと笑い出す。
今日も和季の悪戯に引っかかってしまったようで小さな悔しさを感じる紗夜だが、顔を上げて彼と見つめ合った瞬間、つまらない感情はすべてどこかへ飛んでいった。
紗夜を見つめる和季の目はいつも以上に優しくて、とろけるように甘やかで、この上なんて存在しないほど幸福に満ちている。
「これでお揃いだな」
「……はい」
幸せに浸った和季の宣言に導かれるように、紗夜もこくりと顎を引く。
左手の薬指に光る指輪だけでも嬉しくてたまらないのに、こんなに可愛くて素敵な贈り物をされたら、紗夜はもう断れない。
和季が本当に渡したいものは二人が同棲を始めるための鍵の方で、黄色いリボンのテディベアはそれこそただのおまけだとわかっているのに、もうこの鍵を手放すことなんて考えられない。
今日もS系婚約者の甘い独占愛と策略に陥落していると自覚しながら、それでも指先を結ぶ手に力を込める。
「和季さんとお揃いのものが増えて、嬉しいです」
「ああ、俺もだ」
二人の未来にこんな幸せが待っているのなら――和季がずっと傍にいて紗夜を甘やかしてくれるなら、溺れるほどの独占愛も悪くない。
そう伝えようとした紗夜の台詞は、そっと伸びてきて顎を持ち上げた指先と、甘く濡れた優しい唇に、今夜もすべて奪われてしまった。
――Fin*


