S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる
「嫌では、ない……です」
「じゃあ決まりだな」
紗夜の返答を耳にした和季がホッと安堵したように微笑む。
その表情はいつも紗夜を『深田は仕事の呑み込みが早いな』『勉強熱心で優秀な後輩だから助かるよ』と褒めるときと同じだが、いつもと違ってどこか甘さも含んでいるように思う。
「まあ、そうは言っても今はまだ規定違反だ。社則はいつか絶対に変えるつもりだが、それまでは今まで通りの『先輩』と『後輩』でいるべきだろうな」
「……はい」
和季は経営一族である明里家の御曹司だ。その和季が、まだ会社が小さかった頃にできたどうしようもないルールとはいえ、現状では社内規則とされている決まり事を破るわけにはいかない。
だから仕事ではいつも通りで、という取り決めに同意することもやぶさかでない。
「けど、これからプライベートでは恋人同士だ」
「!」
「明日、誕生日プレゼント買いに行こうな」
「……っ~~!」
和季に笑顔を向けられて、思わず声を失ってしまう。
今年の年末年始はずっと一人で過ごす予定だと言ってしまったばかりに、その予定のほとんどを和季に埋められるのだろうと――これから少しずつ、和季に『色んなこと』を教えられてしまうのだろう、と察する。
けれど、こんなやりとりをしたのも、もう二年も前の話だ。