S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる


 その和季がさり気なく、けれどはっきりと言い切った台詞に驚き、紗夜の動きがぴたりと止まる。その一言にびっくりして、目を見開いて固まってしまう。

「あ、あの……」
「もちろん無理強いはしない。嫌なら断ってくれていい」
「え……えっと……」

 ふいに向けられる和季の真剣な眼差しに、思わずたじろいでしまう。もしやからかわれているのだろうか、と勘ぐってしまう。

 正直、紗夜が気になっているという台詞も、付き合いたいと思っているとの一言も、なにかの冗談なのではないかと思っている。

 和季のように外見も能力も性格も家柄も完璧な人が、紗夜のように平凡で平凡で平凡な後輩を特別に思っているとは信じがたい。

 世の中には和季の隣に相応しい、外見も能力も性格も家柄も優れた素敵な女性がたくさんいるはずなのだから、そういう人を選ぶべきでは、と思ってしまう。

 だが和季は、人を傷つけるような嘘や冗談を言うタイプではない。後輩にふざけて告白して、その反応を見て楽しむ、などという悪質ないたずらをする人ではない。

 つまり彼の中には、本当に紗夜を想う気持ちがある、ということだろう。

 もちろんその形や大きさはわからない。だが紗夜の中にも、和季を信じてみたいと思う気持ちがある。

 本当は紗夜も、憧れの先輩である和季のことをもっと知りたいと思っている。

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