S系策士に豹変した元恋人御曹司の独占愛が甘すぎる

「え……?」

 たしかに、一番最初のメッセージにも『俺の家に来てほしい』と記されていた。

 しかし紗夜は、和季のプライベートエリアに足を踏み入れるつもりはない。会社内にある彼の執務室ならともかく、私的な生活空間を訪れるつもりは一切なく、だからこそ『難しいです』と返信したのだ。

 もちろんその難しい、というのは、住所や道順がわからない、という意味ではない。

「常務。私、ご自宅へ伺うつもりは……!」
『紗夜が来るまで、寝ないで待ってる』

 しかし和季は紗夜の拒否を意に介さない。紗夜の宣言を遮ると、思いもよらない要求を捩じ込んでくる。

『俺に一睡もさせず明日の仕事をさせたいなら、無理して来る必要はないが』
「え……? ……はい?」

 和季自身の睡眠時間、というまさかの交渉カードを提示され、思わず耳を疑ってしまう。間抜けな声まで出てしまう。

 ちなみに、明日は土曜日だ。紗夜の勤める株式会社ルミリュクスは基本的に土曜・日曜・祝日が休暇となっているため、もちろん紗夜も明日は休みの予定である。

 ただしそれは、あくまでルミリュクスと雇用契約を交わしている『社員』の話だ。

 この春から経営者として役員に就任した和季も、社員とまったく同じスケジュールで動いているのかどうかは、紗夜は正確に把握していない。よって和季の主張が嘘か本当かはわからない。

 とはいえ、和季の予定や睡眠時間の管理は、紗夜には一切関係のない話だ。にもかかわらずまさかの条件を堂々と提示され、困惑のあまり二の句が継げなくなってしまう。

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