マッチングした相手は片想いの社長でした
「それだけ那奈は大切にされてるんだよ」

「違うわよ」

思わず顔を上げた。

「お父さんが頑固なだけ。昔からそうなの。自分がこうって決めたら、人の話なんて全然聞かなくて……」

「俺は断られてよかったと思う」

「ええ? ウソ」

涙も忘れて春樹さんを見る。

結婚の許しをもらいに行って、帰れと言われた人の言葉とは思えない。

けれど春樹さんは本気らしい。

「本当だよ」

「どうして?」

春樹さんが私の頬に残った涙を指で拭う。

「ますます那奈と結婚したくなった」

「春樹さん……」

「知ってるだろ。欲しい物は手に入れるって」

その言い方があまりにも春樹さんらしくて、私はとうとう笑ってしまった。

この人には敵わない。
< 274 / 295 >

この作品をシェア

pagetop