マッチングした相手は片想いの社長でした
父に追い返されても傷ついた顔ひとつしない。

それどころか、もっと私が欲しくなったなんて言う。

「……もう」

私は笑いながら、春樹さんの肩に頭を預けた。

その時はまだ知らなかった。

春樹さんが、本当にまた父に会いに行くつもりだったことを。

それも――私には何も言わずに。

数日後。春樹さんは水野製作所を訪れていた。

「こんにちは、お父さん」

父は機械の前で振り返った。

「あんたか。どうした?」

「お父さんの仕事を拝見しに来ました」

結婚の話をするわけでもなく。

もう一度許してくださいと頭を下げるわけでもなく。

父の仕事を見たい。

春樹さんは、そう言った。

「見たって仕方ねえよ」

「ぜひ参考にさせて下さい」
< 275 / 295 >

この作品をシェア

pagetop