マッチングした相手は片想いの社長でした
「ああ、そうだね」

昨日の夜のことなんてなかったみたい。

でも、それでいい。

ここは会社だもの。

私は資料を受け取って席へ戻った。

資料には、いくつもの付箋が貼られている。

必要な数字、確認してほしい箇所、参考資料。

相変わらず細かい。

「春樹さんらしい」

思わず微笑み、資料を胸に抱いた。

こんな小さなことまで嬉しい。

好きな人と想いが通じたら、世界はこんなふうに見えるんだ。

そう思っていた。

この時までは――。

気づけば外はすっかり暗くなっていた。

「んー……」

大きく背伸びをする。

ようやく資料が完成した。

「終わりました」

「ありがとう」

春樹さんはまだパソコンに向かっている。
< 42 / 295 >

この作品をシェア

pagetop