高嶺の花も恋をしたい!
プロローグ
「いたっ……」

 体中あちこちが痛い。経験したことのない場所が筋肉痛だ。
 それに、下腹部にはまだ何かが入っているような違和感がある。
 何かって……思い出すと顔が熱くなる。

 隣でスヤスヤと眠っている男性を見る。
 お風呂に入らず寝たはずなのに、その端正な顔立ちは損なわれず、とっても爽やかに見える。
 さすが同期一のエリート。能力も容姿も、たぶんあっちの能力までもピカイチなんだろう。

 体中痛いけど、彼が優しく導いてくれたおかげで、心はとても満たされていたから。

 といっても、初心者の私には判断のしようがないのだけれど。

 でも昨日の夜を思い出すと、彼のその能力に私は確実に癒されたのだ。そしてどうしようもない現実を受け入れようとしている。

『社会人として一人前になるまで恋愛なんて考えられない。当分の間誰とも付き合う気はない』――あの時、暗い非常階段でそう言ってたっけ……。

 わかっている。彼が女性との付き合いを望んでいないことも、恋愛という文字すら頭にないことも知っていた。だから昨日のことは彼が望んだことではないのだ。
 そう思うと、申し訳ないことをしたと思う。
 
「ん……」

 わ、まずい。ここでのんびり顔を眺めている場合じゃなかった。起きられると気まずい!

 私は床に散らばっている服をかき集め、素早く身に着けると、手帳からメモを一枚取り出し、彼のマンションを後にした。


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