高嶺の花も恋をしたい!
満員電車の救世主
――大学4年生、夏――
時刻は午前8時半。
運悪く通勤ラッシュピーク時の電車に乗り込んでしまった。緊張のあまり早朝に目覚めてしまい、予定していた電車より1時間も早い電車に乗ったせいだ。
私、高嶺花緒は現在就活の真っ最中。今日は大本命である夏成ハウスコーポレーションの最終面接日だった。
背中の真ん中くらいまであるストレートの髪はすっきりまとめ、乱れ毛一つないよう整髪料で整えた。真面目かつ清楚に見えるメイクを施し、スーツにはスチームアイロンをあて、完璧な姿で臨むはずだった。にもかかわらず、現在私のスーツにはシワの出来そうな圧迫感がある。あれほど入念な身だしなみチェックをしたのに。
しかも何気なく並んで乗った車両は一般車両で、女性専用車両でもなかった。世の男性方には申し訳ないけれど、汗ばむこの季節に、充満する男子臭は耐え難いものがある。
すし詰めに近い車内で、吊革を掴むことも出来ないまま電車に揺られていると、尻になにやら這うような感触が……。それは明らかに人の手だった。
――痴漢!?
私は身をよじって避けようとしたが、依然としてすし詰め状態であるため、避けることが出来ない。
せめて手を後ろに回せたら……いや、もう声を上げて叫ぼうか。次の駅までおそらくまだ3分はかかる。
どうしよう……出来れば最終面接を目前に問題を起こしたくないのだけれど。
私は仕方なく耐えることにした。
しかし何のリアクションも起こさない私に意を得たのか、尻を這う手はますます勢いを得て、ついにはスカートの中まで手を伸ばしてきた。
――気持ち悪い! ダメ、限界っ!
その時だった。