高嶺の花も恋をしたい!
 それにこういうチャラチャラした女と俺が合うわけないだろう。

 ここでは新入社員全員が、ユニフォームとして与えられているアクアブルーのトレーナーを着ていて、トレーナーの下はそれぞれ自由だ。

 この女はレースが上から重なった真っ白なスカートを履いていた。女子的には可愛いのかもしれない。だがレースのスカートを履いている時点でもう無理だ。

 ふざけんな。今は研修中だろう? まともな神経をしているのなら、Gパンかズボン。スカートを選ぶにしても、もっと動きやすいものを選ばないか? 根本から合わないんだよ!

 俺の言った言葉がどれだけ理解できたのかわからないが、ものすごく不満そうな顔をしながら女は去って行った。

 やっと解放されて、非常階段から出ようとすると、そこにまた女がいた。

「あの……今ちょっとだけいいですか?」
「……ハァ。いい加減にしてくれないか」
「え」
「メッセージIDの交換はしない! 誰とも付き合う気はない! 合コンもしない! もう話しかけないでくれっ」

 その時の俺は、執拗な女達の誘いにうんざりしていて、完全に冷静さを失っていた。話しかけてきた女の顔に怯えが見て取れ、ハッと我に返ったが時すでに遅し。

「す、すみません。聞くつもりはなかったのですが、少しだけ聞こえてしまったので、ご事情はわかります」
「い、いや……」
「私はお礼を言いたかっただけなので、ご迷惑をおかけするようなことはないと思います」

 そう言って女は引きつった笑みを浮かべた。

 そこで初めて、目の前の女を見たことがあることに気づいた。この印象的な濃い藍色を思わせる大きな瞳。

「夏成の最終面接の日、電車の中で痴漢を遠ざけてくださったの、覚えてますか?」

 最終面接? 痴漢?
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