高嶺の花も恋をしたい!
「あ!」
「その節はお世話になり、ありがとうございました」
「いや、大したことはなにも……」
「私もあの日が最終面接だったんです。痴漢から救ってくれた救世主のおかげで嫌な思いをすることもなく、最終面接に取り組めました」
「そ、そうか」
「それでなにかお礼をと思ったのですが、甘いものはお好きですか?」

 お礼……これは、また例のお誘いか? あの時のことを引き出して、俺に誘いをかけようと? スイーツを食べに行こうとでも言うつもりか?

 正直、他に類を見ないくらいの絶世の美女だったし、細く長い脚にスリムジーンズを履いているところには好感が持てたが、こいつも他のやつらと変わらないのかと思うとうんざりした。

 それが顔に出ていたのだろう。女は慌てて後ろに隠していたものを俺に差し出した。

「あ、あの……これ」
「は?」
「今そこの売店で買ったものなんです。まだ配属先もわからないし、またいつお礼が言えるかわからなかったので、こんなものでごめんなさい」

 そう言ってぐいっと押し付けられたのは、白浜の銘菓『かげろう』だった。

 まさか、これを渡すために追いかけてきただけ? 

 俺は恥ずかしさに一気に顔が熱くなるのを感じた。
 勘違いも甚だしいじゃないか。こんな美女から誘いをかけられたと思うなんて。

「あの、ほんの気持ちなので、受け取っていただけませんか? 甘いものが苦手ならどうぞご家族の方にでも……」
「あ、いや……気を遣わせて申し訳ない。結局はあいつを捕まえられなかったのに、こんなものもらっていいのか?」
「はい! 本当にありがとうございました」

 俺が受け取ると、その女はホッとしたように頭を下げ、にっこりと笑った。
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