高嶺の花も恋をしたい!
 温泉はオリエンテーション合宿で白浜に行ったとき以来だ。

 まさかあの時は、こんな風に高野と一泊旅行をすることになるなんて思ってもいなかったな。

 それにしても、いつも同じマンションに住んでいて同じベッドで寝ているのに、さっきはホテルの一室に並んだツインベッドを見ると、心拍数が上がってしまった。

 いつもと違う空間だからか、キラキラ、ふわふわ、ドキドキした落ち着かない気持ちがして、高野の顔を見ることができない。

 これって、いわゆるお泊りデートなのだろうか。

 昨日は結局あのまま寝てしまったけれど、今日は……どうなんだろう……。

 私はやたらとドキドキしながら、大浴場の窓越しに彦根城を眺めていた。


「美味しそう!」

 近江牛づくしの会席は見た目からしてゴージャスで、どこから手を付けていいのかわからない。

「花緒、乾杯しよう」

 仲居さんがビールを注いでくれたので、私たちはグラスを掲げた。

「少し遅くなったけど、誕生日おめでとう」
「……! 知っていたの?」

 先々週、私は誕生日を迎えた。
 その日は実家から「誕生日パーティをするから帰ってきなさい」と連絡があり、実家に帰っていたのだ。

 高野は高野で従兄と会うと言って出かけていた。

 同居しているけれど、誕生日を祝ってほしいと催促するような関係ではないと思ったし、正直一次試験の結果が出る前だったので、お祝いしてもらうような気分でもなかった。
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