高嶺の花も恋をしたい!
「私ね、人前に立つの嫌なのー」
「設計士だってヒアリングがあるし、プレゼンで前に立って話をしたりするぞ?」
「それとこれとは別! 澄まして人前に立ちたくないの。ただでさえこんな名前なのに、受付に立つなんて冗談みたい。絶対に笑われる」
「いや、笑いはしないだろうけど……」
「おじいちゃんのバカー! なんでこんな名前つけたのよー」

 おじいさんが付けたのか。だからなんとなく古風なイメージなんだな。

「太一くんだって笑ったじゃん」

 とろんとした目で俺を睨む花緒。

「笑ったわけじゃ……」

 むしろ感心したというか。名は体を表すとはまさにこれかと思ったんだよな。

 それに、酔っぱらって絡んでくる花緒は可愛い。出会ってからの花緒のイメージは綺麗ではあるけれど、可愛いが勝っているように思う。
 花緒は自分の名前を嫌だというが、俺は似合っているし、可愛いと思うのだが……。

 そんなことを考えていると、隣からスースーという音が聞こえてきた。

「へ? おい、寝るなよ」

 ふらーっと反対隣の人へ倒れていく花緒を引き留めると、戻ってきた花緒が俺の肩に頭を乗せた。
 まずいな。家の場所を聞き出しておけばよかった。

 時刻はもうすぐ22時。6時間近く飲んでいたのか。俺はザルだが、おそらく花緒にとってはかなりの酒量だったに違いない。

 飲ませ過ぎたことを反省しながら、なんとか花緒を起こそうとするが、結局諦め、マスターにタクシーを呼んでもらうことにした。
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