高嶺の花も恋をしたい!
 今日はソファーで寝て、明日の朝にはここを出ていこう。とりあえず行くあてがないから、実家に帰るしかないか……。

 そう思い、私はそっとベッドを抜け出そうとした。

 壁側に寝ている私は、高野を乗り越えてベッドを降りなければいけない。

 高野も同期と飲んできたのだから疲れているはず。きっともう寝ているだろう。

 そっと……そっと……まるでベッドに壁ドンするかのように高野を跨ぐ。

 そういえば、前にもこんなことがあった気がする。あの時は寝ていなかったけど……。

 そう思っていると、突然高野が片手で私を抱きしめた。体勢が崩れた私は、元いた位置に崩れ落ちる。

(きゃぁっ!)

 ホッ……高野の上に落ちなくてよかった、と思った次の瞬間、ギューッと抱え込まれた。

(……!! く、くるし……)

 ガッと高野が左脚を私に掛けてきて、まるで抱き枕にされている状態になる。

 目の前には高野のTシャツがあって、規則正しい息遣いが聞こえる。真っ暗で見えないけれど、おそらく寝ぼけて私を抱き枕にしちゃったのだ。

 抜け出そうと思えば抜け出せたと思う。

 でも抱きしめられるなんて何日ぶりだろう。

 やっぱりそれが嬉しくてじっとそのままの体勢でいると、少し高い高野の体温でだんだん気持ちが落ち着いてきた。

 嗅ぎ慣れた高野の体臭と、いつもの柔軟剤の香りがする。

(この温もり、この匂い、ホッとする。やっぱり好き……)

 先ほどまでの悶々としていた気持ちが嘘のように鎮まり、次第に私の意識は薄れていった。


 ◇ ◇ ◇
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