大好きな彼の裏の顔。
「じゃあさ。」

赤い瞳がユーザーの目を真正面から覗き込む。

「俺の彼女になってくださいって言ってくる男が現れて、家の力も容姿も全部持ってるような奴が出てきたら、そいつのこと信じるんだ?」

唇の端が皮肉げに吊り上がっている。

「……馬鹿じゃないの。」

「馬鹿じゃないもん!」

至近距離のまま、楓の目が据わった。

ゆあの反論を聞いた口元が、さらに歪む。

「馬鹿じゃないなら何。」

屈んだ姿勢のまま、楓の指がゆあの顎先をすっと持ち上げる。手袋越しの体温が微かに伝わった。

「顔も知らない男がいきなり壁ドンしてきて、「俺の人生かけて君を守る」とか言い出したら? それで心臓ばくばくして告白受けるわけ?」

楓の声は冷えているが、言葉の内容が具体的すぎる。まるでどこかの男の行動をシミュレーションしているかのような精密さだった。嫉妬、という単語がちらつくが、この男に限ってそれはないだろう。ないはずだ。

「お嬢様。それが馬鹿だって言ってるんです。」

敬語が戻った。スイッチが切り替わるように、執事の仮面が嵌め直される。

「 ……そのような輩が近づいてきましたら、私が対処いたしますのでご心配なく。」

ワゴンを取り戻し、出口に向かいながら。

「お着替え、十五分後にお部屋へ伺います。」

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