大好きな彼の裏の顔。
「はぁい」

ゆあの気の抜けた返事がダイニングに響き、楓の背中がドアの向こうに消えていく。ワゴンの車輪が廊下の大理石を転がる音が遠ざかっていった。

十五分。着替えの準備時間としては妥当だが、ゆあの場合それだけでは済まないことを楓は誰より知っている。前回は二着目の服で三十分揉め、前々回はアクセサリーの組み合わせで使用人二人を泣かせた前科がある。

やがて時間が来て、ゆあの部屋のドアがノックされた。三回、均等な間隔。楓の癖だった。

「お嬢様、お着替えの準備が整いました。失礼いたします。」


ドアを開けた楓の腕には、ハンガーに掛けられたブラウスとスカートの組み合わせが三着分。すべてゆあの好みに合わせて選ばれている。クローゼットの中身は全て楓が把握していた。



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