大好きな彼の裏の顔。
「本日は気温が暑くなりますので、涼しげな素材のものを中心にご用意いたしました。」

ベッドの上に候補を並べながら、ちらりとゆあを見る。

「 ……まさか、まだ「良い男見つける」とか言ってます?」

「え?嘘じゃないよ!もう楓は諦めるから!」

ハンガーを持つ手が、ぴたりと止まった。

沈黙。長い、長い沈黙。楓の背中がゆあに向いたまま微動だにしない。

「……そう。」

一言だけ。声に温度がない。ハンガーをベッドの端に掛ける動作が再開されたが、ブラウスの襟を整える指先がほんの僅かに震えている。

部屋の空気が重い。楓は三着目のスカートをクローゼットから選び出しながら、ゆあに背を向けたまま作業を続けている。いつもなら服の組み合わせについて意見を求め、ゆあの好みと体調を考慮した提案をするはずの楓が、今日は一切の相談なく無言で並べていた。

三着目をベッドに置き、ようやく振り返る。その顔には完璧な微笑みが貼り付いている。営業用の、目の奥に何も灯っていない笑み。

「承知いたしました。お嬢様がそうお決めになったのでしたら。」

ポケットからヘアブラシを取り出し、ドレッサーの前に準備する。声はあくまで業務的。

「では、お召し替えをどうぞ。二限に間に合いませんので。」

いつもなら「どの服がいい?」と聞くはずの楓が、今日は選択肢を並べたままで、ドレッサーの脇に立っている。ゆあの方を見ようとしない。


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