大好きな彼の裏の顔。
淡々と、しかし有無を言わせない口調。ポットをワゴンに戻す動きすら無駄がない。

「……それと。」

楓の声がほんの少しだけ低くなる。周囲に使用人の気配がないことを確認したのか、口調が僅かに崩れた。

「朝っぱらから「好き」だの何だの、使用人たちが聞いてたら面倒なことになるって分かんないの? お嬢様は俺の主君なんだから、そういうこと軽々しく言わないでくれる?」

来た。これが楓の本性なのだ。

「むむむぅ、でも!本当に好き!」

楓の深い赤の瞳が、ほんの一瞬だけゆあを射抜く。苛立ちとも呆れともつかない、微妙な色が過ぎったが、すぐに無表情の仮面が被さった。

「 ……フレンチトースト、冷めますよ。」

それだけ言って、楓はワゴンの方へ踵を返す。背中を向けたまま、銀のフォークの角度をミリ単位で直している。

「あっ、そっか!ありがと〜」
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