この放課後はきっと、一生忘れない 【短編】
転校してきて三日目。
 私はもう、教室の空気になじめずにいた。

 クラスの中心には、いつも人がいる。
 笑って、ふざけて、楽しそうで。
 その輪の少し外にいる私は、誰にも気づかれない透明人間みたいだった。

 でも。

 窓際の一番後ろの席にいる彼だけは、少し違った。

 名前は朝倉 恒一。
 無愛想で、あまりしゃべらなくて、女子からはかっこいいと騒がれているのに、本人はまるで興味がなさそうだった。

 放課後、宿題のプリントを職員室に届けようとしていた私は、階段の角でつまずいた。

 「あっ……!」

 紙がぱさっと宙に舞う。
 終わった。最悪。そう思った瞬間、誰かが一枚ずつ拾い上げてくれた。

 「これ、お前の」

 低くて落ち着いた声。
 見上げると、朝倉くんだった。

 「え、あ……ありがとう」

 「ん」

 それだけ言って、彼は立ち去ろうとした。
 でも私は、なぜかその背中を呼び止めていた。

 「朝倉くんって、やさしいんだね」

 彼は足を止めた。
 少しだけ振り返って、困ったように目を細める。

 「別に普通」

 そのまま行ってしまったのに、私の胸はなぜかうるさかった。


 
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