薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
その時。

未來が突然、私を見る。

「……奏の全部が羨ましかった」

「……え?」

思っていた答えと違って、一瞬、意味が分からなかった。

「それだけよ」

未來は私から目を逸らさない。

「お金に困ったこともない。欲しいものは買ってもらえて。両親から愛されて。勉強も出来て。どこへ行っても人が集まって」

そんなこと。

一度も思ったことなんてなかった。

私は自分に自信なんてなかった。

足りないものばかりだと思っていた。

でも。

未來の目には、違って見えていた?

「何でも持ってるくせに、自慢もしない。何でもないみたいに笑ってる。それが……本当に嫌だった」

未來の声が揺れる。

「だから、全部奪ってやろうと思った」

胸の奥が冷たくなる。

「最初から?」

「最初は、ただ羨ましかった。でも一緒にいるうちに、どんどん嫌になった。どうして奏ばっかりって」

未來が坂上先生を見る。

「それで坂上先生と知り合って……奏の家の会社なら使えるって言われた」

坂上先生の表情が僅かに動く。

「両親を騙したのは本当。投資の話を持ちかけた。私なら信用してくれるって分かってたから」

胸が痛んだ。

両親は未來を。

私の友達だから。

信用した。

「でも」

未來の声が変わった。

「事故は違う」

「……何が?」

「あれは、本当に事故だった」

初めて、必死な顔になった。

「わざとじゃない。殺そうなんて思ってなかった。あんなことになるなんて思わなかった」

事故。

そこだけは違う?

「運転してたのは私。でも、わざとぶつかったわけじゃない。事故を起こして……怖くなって……どうしたらいいか分からなくなって」

声が掠れる。

「坂上先生に連絡した」

坂上先生が一瞬、目を閉じた。

「何とかしてって。捕まりたくない。全部終わるのが怖い。どうにかしてって」

「それで?」

「そのあと……馬淵さんが運転していたことになった」

「会社は?」

未來の唇が止まる。

「会社も。お金も」

そして、坂上先生を見る。

「坂上先生が動いた」

レストランの空気が重くなる。

「私は両親を騙した。会社を狙った。それは認める。でも事故まで計画してたわけじゃない。事故自体は本当に偶然だった」

私は未來を見る。

事故が故意ではなかったとしても。

そのあと逃げたことは、偶然じゃない。

「人が死んでるのよ?」

未來の肩が揺れる。

「分かってる」

「分かってないでしょう」

声は荒げなかった。

「別の人に罪を負わせて。会社を奪って。両親の財産まで動かして。そのあとも何年も何も言わなかった」

未來は答えない。

その沈黙で十分だった。

「……それだけじゃない」

未來が小さく言った。

「子どものこと」

空気が、また変わる。

「子どもは、坂上先生との間に出来た子よ」

誰も驚かなかった。

もう、鑑定結果を見ている。

でも。

本人の口から聞くと、やっぱり違った。

「私は坂上先生と関係があった。だから、あの子が出来た」

坂上先生の表情が強張る。

「耕史の子じゃないの?」

分かっていても聞く。

未來は首を振った。

「違う」

「馬淵さんでもない」

「違う」

「じゃあ、二人ともそう思ったままにしてたの?」

未來は何も言わなかった。

その沈黙が、また答えだった。

耕史は自分の子だと思っていた。

馬淵さんも。

そして未來は、訂正しなかった。

「……本当に、人を使うのが好きなのね」

「そうじゃない!」

「じゃあ何?」

「坂上先生との関係を知られたくなかった。全部失うのが怖かった。それで……」

「それで、耕史にも馬淵さんにも本当のことを言わなかった?」

「……そう」

もう、言葉がなかった。

事故。

会社。

財産。

坂上先生との関係。

子ども。

身代わり。

別々に見えていたものが、全部この二人の都合で繋がっていた。

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