薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
数秒の沈黙。

最初に口を開いたのは純さんだった。

「えっ? 陸斗、何も話してないの?」

「…………」

答えない。

その沈黙に、大雅さんが眉間へ皺を寄せる。

「おいおい、マジか。そこ話してないのかよ」

「何ですか?」

私は陸斗さんを見る。

「何を話してないんですか?」

誰もすぐには答えない。

紗凪さんが小さく息を吐いた。

「陸斗さん、それはさすがに駄目でしょう」

「サイテー」

純さんまで重ねる。

「待ってください!」

何。

何なの。

私以外、全員知ってるんですか?

愛梨さんは困ったように笑いながらも、どこか納得した顔をしている。

「まあ……陸斗先生なら、ありそうですね」

「愛梨さんまで!」

暢さんは額へ手を当てた。

「プロポーズを先にして、肝心な話をしていないとは。見事に順番を間違えましたね」

「なんてオチなの」

聖子さんまで笑う。

征さんも呆れた顔で陸斗さんを見た。

「これはさすがに陸斗さんが悪いですよ」

鈴子さんに至っては、

「あら。陸斗らしいじゃない」

と笑っている。

「どこがですか!」

皆さん、好き勝手言いすぎです。

「もういい」

そこで茂樹先生が片手を上げた。

「陸斗、お前はちょっと黙ってなさい」

「父さん」

「順番を間違えてプロポーズした人間に説明させると、また大事なところを飛ばしそうだからね」

陸斗さんは何も言わなかった。

反論しない。

そこは認めるんですね。

私はもう、茂樹先生へ身体ごと向き直った。

「お願いします」

「うん」

茂樹先生は少し笑ってから、私を見る。

「十六年前。奏ちゃんが十二歳、陸斗が十八歳の頃だ」

「十二歳……」

「二人は公園で会っている。そのあと、図書館でも何度か顔を合わせていた」

「図書館……」

その言葉が、胸の奥へ小さく引っかかった。

「何度も?」

「そう。ただし、今の陸斗と同じ人間だと思って記憶を探しても、たぶん出てこない」

「どういう意味ですか?」

茂樹先生の口元が緩む。

「当時の陸斗、かなり太ってたから」

「父さん」

「黒縁メガネで、髪も野暮ったくて」

「父さん」

「暗かったし」

「もういいです」

私はゆっくり陸斗さんを見る。

今、目の前にいる人は背が高く、すっきりした体型をしている。髪も綺麗に整っているし、黒縁メガネなんてかけていない。

敏腕弁護士なんて呼ばれている。

その人が。

「……太ってたんですか?」

「そこですか?」

「だって全然想像出来ません」

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