薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
私は再び布団へ顔を埋め、しばらくそのまま動けなかった。

事件が終わったら、田舎へ行って静かに暮らそうと思っていた。

誰にも追われず、誰にも振り回されず、何も起こらない毎日。

それが、私の思っていた『安らぎ』だった。

でも今、隣には陸斗さんがいる。

左手には、まだ信じられない婚約指輪。

そしてこの先には、あの濃すぎる家族までついてくる。

……静かではない。

絶対に。

むしろ今まで以上に騒がしくなる気しかしない。

なのに、不思議だった。

嫌じゃない。

それどころか、胸の奥が少しだけ温かい。

もう逃げなくていい。

誰かを疑い続けなくていい。

一人で全部抱えなくていい。

何かあれば、勝手に集まってくる人たちがいる。

怒って、笑って、心配して。

放っておいてと言っても、たぶん放っておいてくれない。

家族を失ってから、ずっと一人で生きてきた私は、その騒がしさにいつの間にか救われていた。

もしかしたら、私が欲しかった安らぎって、何も起こらない毎日のことじゃなかったのかもしれない。

何かが起こっても、戻ってこられる場所があること。

怖くても、隣に誰かがいること。

一人で抱えなくてもいいと思えること。

それが、本当の安らぎなのかもしれない。

「奏」

「……何ですか」

「指輪」

「はい」

「外さないでくださいね」

布団の中から顔だけ出し、陸斗さんを見る。

「朝から執着すごいですね」

「今さらでしょう」

「認めるんですね」

「否定する理由がありません」

また、それ。

私は呆れながらも、左手をそっと持ち上げた。

朝の光を受けて、薬指の指輪が小さく輝く。

十六年前、何気なく声を掛けた男の人。

その人が今、私の隣で笑っている。

私の人生を滅茶苦茶にした過去は、ようやく終わった。

そして、その先に待っていたのは、私が思い描いていたものとは随分違う未来だった。

静かじゃない。

たぶん、ものすごく騒がしい。

思い通りにならないことも、きっとこれからだって山ほどある。

それでも、帰る場所があって、隣にいる人がいて、そこで笑えるなら。

それも、悪くないのかもしれない。

……ただし。

朝起きたら婚約指輪をはめていて、その隣に裸の婚約者がいる生活を、本当に『安らぎの日々』と呼んでいいのかは――。

まだ、ちょっと分からない。
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