薔薇色って何色?――ロト7で人生をやり直すはずが、敏腕弁護士の執着愛に捕まりました――
胡凛の誕生日パーティーは、最後まで滞りなく平和に終了するはずだった。

でも、やっぱり私の人生は、そう簡単には静かになってくれないらしい。

みんなが騒いでいる。

茂樹先生は、

「二度あることは三度あるんじゃない?」

なんて呆れながら笑っていて、鈴子さんは早くも一億円の使い道を考え始めている。

聖子さんも、純さんも、大雅さんも、暢さんも、恵麻も、真那斗さんも、子どもたちも、みんな好き勝手なことを言いながら笑っていた。

私は少し離れた場所から、そんな光景を眺めた。

昔だったら、これだけ大勢の人に囲まれて、これだけ騒がしくて、自分のことに好き勝手口を出される生活なんて、絶対に嫌だと思ったはずなのに。

今は、この騒がしさが妙に心地いい。

そんなことを考えていた時、ふと、ずっと心のどこかに残っていた言葉を思い出した。

――薔薇色って、何色ですか?

私の人生は、何色なんだろう。

人生をやり直したくて、ただ必死だった頃の私は、幸せというものはもっと綺麗で、穏やかで、何の不安もなく、毎日が静かに満たされているようなものだと思っていた。

『薔薇色の人生』と聞けば、きっと淡いピンク色のような、傷も汚れもない綺麗な未来を思い浮かべていたと思う。

でも、実際に私が歩いてきた人生は全然違った。

笑って、泣いて、裏切られて、傷ついて、逃げて、追いかけられて、また逃げて、それでも捕まって、結婚して、三つ子を産み、気づけば子どもが六人になった。

毎朝戦争みたいに騒がしくて、疲れて、怒って、呆れて、それでも最後には誰かと笑っている。

完璧に穏やかな日なんて、ほとんどない。

むしろ何かしら起きている。

それなのに、気づけばいつも誰かが隣にいて、私を呼ぶ声があって、帰る場所があって、困った時には手を伸ばしてくれる人がいて、何年経っても呆れるくらい私を抱きしめてくれる人がいる。

一人で人生をやり直すつもりだったはずなのに、いつの間にか私の人生は、一人では到底抱えきれないくらい、たくさんの人でいっぱいになっていた。

それが、今の私の人生だった。

「……分かった」

思わず呟くと、隣にいた陸斗さんが私を覗き込んだ。

「何がですか?」

「薔薇色って、何色なのかなって。ずっと思ってたんです」

陸斗さんが少しだけ首を傾げる。

「答え、出ました?」

「……多分」

私はそう答えて、もう一度ゆっくり家の中を見回した。

大きくなった子どもたち。

まだ小さな子どもたち。

昔と変わらず騒がしい人たち。

そして、何年経っても私を手放す気なんて一ミリもない人。

きっと、これからもいろいろある。

子どもたちはもっと大きくなって、いつかこの家を巣立っていくだろう。

私たちも年を取る。

ずっと笑っていられる日ばかりじゃないだろうし、つらいことや悲しいことだって、きっとある。

でも、それでいい。

泣いたことも、逃げたことも、傷ついたことも、誰かを信じるのが怖かったことも、それでももう一度誰かを信じたことも、今こうして笑っていることも。

全部ひっくるめて、これが私の人生だから。

薔薇色というものが、本当に一つの色なのかどうかなんて、きっと誰にも分からない。

赤かもしれない。

ピンクかもしれない。

白かもしれない。

あるいは、泣いた日も、笑った日も、苦しかった日も、幸せだった日も全部混ざり合って、誰にも名前をつけられない色になっているのかもしれない。

でも、それでいいんだと思う。

私にとっての薔薇色は、誰かが決めた綺麗な色じゃない。

私自身がここまで歩いてきた人生、そのものだから。

そこまで考えて、私はふと気づいた。

そんな人生が動き始めた最初のきっかけも。

今また、こうして家族全員を大騒ぎさせている原因も。

何故か。

お金。

一度目は、ロト7。

約十二億円。

二度目は、スクラッチ。

一億円。

「…………」

何だろう。

ここまで感動的に考えていたのに、急に全部どうでもよくなってきた。

私は思わず吹き出した。

「奏?」

「いえ」

「何ですか?」

「分かりました」

「だから何が?」

私は笑いながら、陸斗さんを見る。

人生をやり直すつもりだった私を、とんでもなく騒がしい人生へ引きずり込んだ人。

何年経っても愛情が重くて、何年経っても私が逃げると思っていて、『早く帰ってきて』と送っただけで離婚危機だと思い込んで飛んで帰ってくる人。

そんな人が隣にいて、目の前では子どもたちが笑っていて、その向こうではまた一億円の使い道を巡って家族が好き勝手なことを言っている。

私にとって。

幸せの色は。

どうやら――。

「金色みたいです」

「……金色?」

陸斗さんが、本気で意味が分からないという顔をした。

私はとうとう声を上げて笑った。

だって、仕方がない。

私の人生は、どうやら最初から最後まで、お金と縁があるらしい。

薔薇色って、何色ですか?

その答えは、きっと人それぞれ。

でも、私の場合は。

たくさん泣いて。

たくさん笑って。

大切な人たちに囲まれて。

そして何故か。

二度も一等が当たった。

だから。

私の薔薇色は――。

どうやら、とびきり眩しい金色のようです。

――おわり。
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