天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「彼は類まれなる優秀な医師だ。彼の傍にいて、藍衣にとって損はない」

「縁談なら、私だって考えていました! 藍衣のためになるよう、相手を吟味して――」

「藍衣のため? 金を搾り取れる相手を吟味していた、の間違いだろう?」

冷ややかに睨みつけられ、郷一郎はぎくりとして固まった。しかし、すぐさま「ですが」と反論し、一歩前に進み出る。

「なぜよりにもよってこいつなのです!? 説明したではありませんか、この男は朱璃をあんな目に遭わせた仇だと――」

「郷一郎」

次に声をあげたのは一葉だ。呆れたように肩を落とし、郷一郎を睨みつける。

「その件は諸々誤解がありそうね。今は論じるべきじゃない」

憤然とする郷一郎を諫め、一葉は話を続ける。

「滝沢くん、君は君でもう少し弁解なり説明なりした方がいい。結婚が滞りなく進めば、この郷一郎は君の義理の父になるのだから」

黎士にとって一葉は、このロイヤルフロアにおいては上司にあたる。そして自分をこの病院に招いてくれた恩人だ。

そんな尊重すべき女性に諭され、黎士はようやく涼やかな目を郷一郎に向けた。

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