天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「これが黙っていられるか!」

郷一郎が不満をあらわにしたとき。

ドアの外から「失礼します」と声がかかった。ノックとともにドアを開け放ったのは、この騒動の張本人でもある黎士だ。

涼やかな美貌を携え、白衣をなびかせて悠然と部屋に入ってくる。

横にいる郷一郎や一葉を無視し、貞平のもとへ一直線に向かった。

「僕を呼んでいると伺ったのですが。体調が優れませんか?」

そのふてぶてしい態度を見て、郷一郎が眉間に皺を刻み、怒りを爆発させた。

「貴様……! 藍衣に手を出そうとするとは!」

「やめなさいと言っているでしょう」

一葉が郷一郎の腕を掴む。

そんな彼らを黎士は涼やかな目で一瞥すると、貞平に向き直った。

「患者が待っているので、プライベートな要件でしたらあとにしていただきたいのですが」

莫大な財を有する資産家相手に臆面もなく要求する黎士に、貞平はしわがれた声で「忙しいところ申し訳ない」と謝罪を口にした。

「早々にはっきりさせておく必要があったのでな」

近くに来るよう指示し、黎士の背中に手を置いて郷一郎に向き直る。

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