天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
用もないのに黎士がやたらと藍衣に引っ付いてくることを、いい加減、亜嵐も訝しく思っているのだろう。当初は使っていた敬語も、今はなくなっている。

「邪魔者みたいに言わないでもらえるか。これでもロイヤルフロアでご指名ナンバーワンの医者なんだが?」

「そのナンバーワンが、なんで藍衣にばっか張りついてんだ? 公私混同じゃありませんかねえー」

「休憩時間に厨房を視察しようと自由だろ」

「いや自由じゃねえよ、関係ないやつが厨房に来んな、衛生的に」

お決まりのような喧嘩をしたあと、藍衣と亜嵐は食事と患者について情報を共有し、いくつか相談をしたあと厨房を出た。

あっという間に担当患者の回診の時間。名残惜しいが藍衣に別れを告げ、自身は病棟に向かった。



回診を終えて医局に戻ろうとすると、ロイヤルフロアの敷地の入口、白薔薇本館の中庭と接する通路に亜嵐が立っているのが見えた。

運悪く目が合ってしまい、お互い「げ」という顔をする。

誰かを待っているようだが――彼女だったら許さないと苛立ちを抱えながら声をかけた。

「誰待ちだ? 黒芭さんか?」

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