天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
すると、彼女は少々驚いた顔をした。縁談のことを知られているとは思わなかったのだろう。しかし、すぐにまた愛らしい笑顔を作る。

「また来るね」

一方的にそう宣言してくるりとうしろを向き、立ち去ろうとする。

「来られても困る。俺は藍衣を――」

愛している、そう説明しようとすると、彼女が肩越しに振り向いた。

「あなたの気持ちは関係ない。私が来たいから来ているの。私の行動を制限する権利はないでしょう?」

無茶苦茶な理論をぶつけられ、唖然とする。

確かに彼女は黎士の顔を見るだけで、なにかを要求してきたわけではない。だが――。

(そんなのアリか……?)

彼女のうしろ姿を、かける言葉も見つからず呆然と見つめ続けた。



それからわずか三日後、再び朱璃が会いに来た。

黎士が手術を終えてロイヤルフロアの回診に向かう十七時。彼の行動を読んでいたかのように中庭とロイヤルフロアを繋ぐ通路に彼女が立っていた。

「もう来ないでほしい」

そう切り出したのは、やはりこのままではまずいと思ったからだ。

朱璃はよくわからないと言った顔で首を傾げる。

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