天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
お菓子でも入っているらしい。あらゆる意味で受け取るのを躊躇っていると、彼女は慌てて弁解を始めた。

「あ、大丈夫、手作りではないから。ちゃんとお店で買ったわ。藍衣から黎士さんは手作りが苦手だって聞いたの」

「それは、わかるが……わざわざこんな時間にどうして。君から物を受け取る理由もない」

すると、紙袋を引っ込めてにっこりと微笑んだ。

「いいの。これは口実。会いたかっただけなんだから」

素直な人だなあと感心する。同時に、どうして妹はあんなに素直じゃないんだ?と不思議になった。反動だろうか。

「あーあ、藍衣が羨ましい。黎士さんの綺麗な顔を、毎日眺められるなんて」

彼女は小首を傾げ、体を揺らしてわざとらしく拗ねた顔をする。

彼女の言動から、藍衣との決定的な違いを感じた。藍衣は媚びを売るような態度はしない。

そして、他人の顔で価値を測らない。いつだって相手の中身を見ている。

「藍衣はこんな顔、眺めたって喜ばない」

思わず否定すると、彼女が目を輝かせて覗き込んできた。

「『藍衣』って名前で呼ぶようになったんだ?」

探られていることに気づき、息を呑む。

「……君は縁談があるんだろう? こんな時間にこんなことしてて、いいのか?」

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