天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
突如彼に主治医として指名され、このロイヤルフロアでもっとも豪華な病室であるロイヤルスイートを訪れると。

「診察よりもまずは我が孫娘・藍衣について話しておきたい」

貞平に開口一番そう切り出され、息を呑んだ。

「藍衣は心優しい孫でね。実家を出てひとり暮らしを始めてからも、よく見舞いに来てくれた。君のことも聞いているよ、滝沢先生。自分を好いてくれる大切な人だと言っていた。父や姉には内緒だと……天国にいる母とお祖父様にだけ特別に教えると言ってくれた」

藍衣がそんなことを、と目を見開く。亡き母と大切な祖父にだけ話した、恋人の存在――それだけ自分を大切に思っていてくれたのだ。

喜びと同時にいっそう現状が悔やまれて、奥歯をかみしめる。

「だが、藍衣は記憶を失い、郷一郎の庇護下――と言えば聞こえはいいが、今や籠の鳥だ。我が身の不徳を晒すようで恥ずかしいことこの上ないが、息子は手に負えない愚か者でね。儲け話に乗せられては借金ばかり作っている。今は私が借金の肩代わりをしているが、もしここで私が死んでしまったら、娘たちを金で売り捌くだろう」

「娘を……売る?」

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