天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
希望を胸にモニターを覗き込むが、そこに映っていたのは藍衣ではなく、キャップを目深に被った見覚えのない人物。いや――。

モニターに映るその人物がキャップを脱ぐと、そこには見知った顔があった。

(まさか彼女か……?)

自らここに足を運ぶとは――戸惑いながらもエントランスの扉を解錠し、玄関のドアを開けた。

「黎士さん。お久しぶりです」

そう艶やかに笑ったのは藍衣の姉、朱璃だ。

しかし、装いは以前とはまるで違う。メンズライクなジーンズとパーカーに大きなリュックを背負っており、髪はばっさりと切り落としショートカットになっていた。

「いったい、どういうことなんだ。なぜここに?」

しかも、藍衣が行方不明になったこのタイミングというのが気掛かりだ。

すると朱璃は別邸で会ったときとは別人のような、冷静な声で言った。

「藍衣が父親に連れ去られて困っている、違う?」

凍り付く黎士をよそに、彼女は「お邪魔します」と上がり込む。

「なにを知っているんだ、あなたは」

わからないことばかりだ。朱璃の行動も反応も、今日このタイミングでこの場に現れたことも。

朱璃は廊下の真ん中で足を止め、神妙な顔で振り向いた。

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