天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
鼻の下をこすりながら、わずかに俯く。ほんのり頬が赤いように見えるのは――。

(……照れてる?)

いや、そんなわけがない。こんな爆モテなルックスを持つ男が、初対面の女性に名前を呼ばれた程度で照れるとは思えない。きっと気のせいだ。

それより今、聞き捨てならない言葉を耳にしたような気がする。

(懐かしい……?)

眉をひそめて彼を覗き込む。もしかして、記憶喪失の間に顔を合わせたことがあったのだろうか。

「初対面……ですよね?」

「……そうだよ」

ワンテンポ遅れて、こくりと頷く彼。初対面であることは確かなようだ。

(なんていうか……やっぱり変な人?)

姉の仇とは知りつつも、やはりただの変わり者にしか見えなくて、憎む気持ちが湧き上がってこない。

それに、不思議と彼を見ていると警戒心が緩んでしまうのだ。

まるで既知の友人のような。……いや、それ以上に大切な絆がふたりの間にあったかのような――。

(ううん、そんなはずない。初対面だって彼も認めたし)

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