天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
第二章 厚遇の娶られ生活
「藍衣は疲れてるだろ。今日の夕食は俺が作るから、休んでろ」
レジデンスに移り住んだ日の夕方。そう頼もしいことを言ってキッチンに入っていく黎士。
冷蔵庫を開きながら、「チャーハンでいいか?」と何気なく尋ねてくる。
藍衣は「お任せします」と答えて、ダイニングテーブルに座った。
食材を持って調理台の前に立つ彼。表情の乏しさも相まって、絵に描いたような整った顔をしている。
優雅な横顔からは料理にこなれている感じがひしひしと伝わってきた。
(外科医は手先が器用だから、料理の上手な人が多いって聞いたことがあるけど……)
彼も典型的なそのタイプなのだろう。夕食の準備を買ってでたところを見ると、料理が苦にならない人なのかもしれない。
大人しく夕食ができるのを待っていると。
ダンッ――とまな板を叩きつけるような激しい音が響いた。驚いて腰を浮かせる。
黎士は涼やかな顔のまま、ダン! ダン! と通常は鳴らないであろう強烈な音を発し続けている。
思わず藍衣はキッチンに近づいて、カウンター越しに彼の手元を覗いた。