天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「パンはあったよね。ベーコンも。野菜もたくさんあるし」

ひとり暮らし時代、よく朝食にしていたベーコンエッグとトースト、サラダ、ヨーグルト。この組み合わせを久しぶりに作ろうとフライパンを手に取った。



「ただいま。……掃除したのか?」

黎士が帰宅早々尋ねてきたのは、もちろん催促やいやみなどではなく、リビングの床や棚がピカピカに磨かれていたからだろう。

「はい、体調がよかったので」

応える藍衣はネイビーのエプロンを首からかけている。リビング収納を確認していたら偶然見つけたのだ。

「といっても充分きれいでしたので、大したこともしていませんが。これまでは黎士さんが掃除してらしたんですか?」

「……何度かコンシェルジュ経由で清掃サービスを頼んだ」

「なるほど、それで。あ、野菜スープを作りましたけど食べます? もしお腹いっぱいでしたら、フルーツでもむきましょうか」

尋ねると、黎士は眉を寄せてネクタイの結び目を緩めながら、ぽつりとひと言、呟いた。

「頑張っちゃう病が出たな」

「……はい?」

(今なんて?)

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