天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「だいたい、俺の誠実さはこの一週間で証明されただろ。一度も襲わなかったし」

さらりと言いのける彼。

(え。この人、私にキスしたこと忘れてるの……!?)

目を見開いて覗き込むと、ようやく思い出したのか、彼は少々気まずそうに空を見上げた。

「じゃあ……つまり、嫌なんだな? 離す?」

再び視線を落とした彼の顔には、不機嫌さに混じって寂しさが浮かんでいて、それはそれで拒みづらくなった。

捨てられた子犬、それも『へえ? 俺を捨てるの? 別にいいけど?』みたいな強がりをありありと滲ませている。

(断りづらい……)

文句を呑み込んで「……このままでいいです」と答えると、彼の目がパッと輝いた。

相変わらずの能面――なのに、不思議と今は彼の感情がわかる。彼の尻尾がパタパタと揺れる幻想が見えた。

「病院のすぐ裏手にジェラート屋がある。俺がこの病院に来たのと同じ時期にオープンした店で」

「そこに私が、記憶を失っていた間に行っていたのではないかと?」

「というか行ってた。断定」

「なるほど……?」

ピンと来ないまま、手を引かれてジェラート屋に向かう。

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