天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
「これで脳に刺激を与えれば記憶が戻ることは立証された。藍衣の思い出の場所を巡っていれば、また思い出すことがあるかもしれない」

自身の言葉をかみしめながら、小さなガッツポーズを作る彼。なにか良案でもひらめいたかのように「そうだ」と言って顔を上げた。

「藍衣。体力はまだ残ってる?」

「体力? ……まだそこまで疲れてはいませんけど」

「少し寄り道しよう。ここからすぐだから」

そう言って勢いよく藍衣の手を握って歩き出す。指を絡められ、ぎょっとした。

「あの……っ」

立ち止まり、彼の顔と手を交互に見ながら訴える。

ようやく気づいたのか、彼はふと冷静になって「ああ」と漏らした。同時に、きらきらした少年のような顔がスンとした能面に戻る。

「婚約者だし、今日はオフだし。問題はないと思うけど」

「で、でも、『嫌がるなら近づかない』って言いましたよね?」

「嫌なのか? 今すぐ手を振り解きたいほど嫌?」

「そ、そこまでかと言われると……」

進んで手を繋ぐつもりはないが、今すぐ振り解きたいほどの嫌悪感もない場合はどうすれば。藍衣は困った顔で手に視線を落とす。

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