天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
そう笑う彼は、医師でも姉の仇でもなく、ただの歳の近い青年に見えた。
ずきりと胸が痛んだのは、心を許していい相手かどうか、まだ判断がつかないからだ。彼を信じたい気持ちと、彼の過去と向き合わなきゃならない重圧がせめぎ合う。
「黎士さん」
あらたまって切り出すと、彼は藍衣の手元のオレンジジェラートにかぶりつきながら、無垢な目をこちらに向けた。
「姉となにがあったんです?」
無邪気な表情が一転して曇る。
「その質問は無駄。たとえば俺が『自分はまったく悪くない』『すべてお姉さんが悪い』と言ったら、信じられる?」
「それは…………」
嘘と決めつけはしないが、素直にも信じられないだろう。
なにを説明されたところで、その場を見ていない藍衣に真実を見極める術などないのだ。
ならばせめて、自分が一番信じられる人間――生まれてからずっと傍にいて、当事者でもある姉から事情を聞きたい。
「……朱璃姉さんに、会いたい……」
ぽつりと漏れた言葉に、黎士はなんともいえない顔で黙り込む。
一見すると無表情な彼だが、どことなくその姿は、耳も尻尾も力なく垂れた元気のない犬のように見えた。
ずきりと胸が痛んだのは、心を許していい相手かどうか、まだ判断がつかないからだ。彼を信じたい気持ちと、彼の過去と向き合わなきゃならない重圧がせめぎ合う。
「黎士さん」
あらたまって切り出すと、彼は藍衣の手元のオレンジジェラートにかぶりつきながら、無垢な目をこちらに向けた。
「姉となにがあったんです?」
無邪気な表情が一転して曇る。
「その質問は無駄。たとえば俺が『自分はまったく悪くない』『すべてお姉さんが悪い』と言ったら、信じられる?」
「それは…………」
嘘と決めつけはしないが、素直にも信じられないだろう。
なにを説明されたところで、その場を見ていない藍衣に真実を見極める術などないのだ。
ならばせめて、自分が一番信じられる人間――生まれてからずっと傍にいて、当事者でもある姉から事情を聞きたい。
「……朱璃姉さんに、会いたい……」
ぽつりと漏れた言葉に、黎士はなんともいえない顔で黙り込む。
一見すると無表情な彼だが、どことなくその姿は、耳も尻尾も力なく垂れた元気のない犬のように見えた。