天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
黎士に言われるがまま、裏手にある公園に移動する。

公園といっても遊具はなく、木々に囲まれた散歩道が延びている。ふたりは道の端に置かれている長いベンチに並んで腰を下ろした。

「本当に、ここにふたりで?」

「そう。ここに。ふたりで」

彼はわざわざご丁寧に文節に区切ってその事実があったことを強調する。

「どうやったらそんなシチュエーションに」

「だから言っただろ。藍衣が俺に一目惚れして――」

「それだけはあり得ません。一葉伯母様も違うって言ってました」

「……チッ」

やはり騙そうとしていたのだろう、黎士は舌打ちしたあと、ぱくりと自身のジェラートをひと口食べた。先端が欠けたそれを、今度は藍衣の顔の前に持ってくる。

「ふたりでこうやって食べた」

「また騙そうと――」

「これは本当。本当に本当」

真面目な顔で言う彼に、藍衣はぎょっと眉をひそめる。

そんなふたりの前を、小学生くらいの子どもたちが楽しそうに駆けていった。その様子を黎士は目で追いかけながら、ふっと口元を緩める。

「藍衣の分のジェラートは、転んだ子どもにあげたんだ。だから俺たちは残ったこれを分け合って食べた」

説明を受けて、ああ、と腑に落ちた気がした。

膝を擦りむいて泣いている子どもに、絆創膏とジェラートを差し出した、そんな光景が頭に浮かび上がってきたのだ。

思い出してしまったからには仕方がない。差し出されたティラミスのジェラートをひと口食べる。

「……ちょっと、苦めです」

「前も同じことを言ってた」

目元を緩めて、いたずらっぽい表情をする彼。

「藍衣はお子様舌だな」

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