天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
(――いや、どうだろう。俺のせいなのかもしれない)

望んだわけではないし、手を下したわけでもないが、自分が引き金になった可能性はある。

彼女がこんな状況になったのも、彼女の姉が心身に異常をきたしたのも、自分が原因ではないか、そんな負の感情に呑み込まれそうになる。この呪われた顔で、一体何人の人生を狂わせれば気が済むのか――。

(……飛躍しすぎだ)

非現実的な思考を振り払う。彼女の姉を傷つけたのは確かだが、あらゆる事象すべてが自分のせいだと思い込むのは、卑屈を通り越して傲慢だ。

それにしたって――。

「君も君で、なかなか酷いぞ?」

安らかな寝顔の彼女に文句を垂れる。

『藍衣は俺に一目惚れして、毎日俺のことを追いかけ回していた』――真実だったならよかったのだが、残念ながらそうではない。

むしろ夢中になったのは黎士の方で、生まれて初めて自分を男として頑なに見ようとしない仕事人間を相手に、日々翻弄されていた。

「ようやく心を開いてくれたと思ったのに、全部忘れたなんて。残酷な人だよ、君は」

そっと彼女の後頭部に手を回して支え、額に口づける。

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