天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
過去に起きた出来事を一から十まですべて説明してやることもできるが、そうやって過去を共有したところで、感情が伴わなければ意味がない。

記憶など、現在の感情のおまけにしかすぎないのだから。

「早く思い出してくれ……」

彼女の肩をぎゅっと抱きながら、幾度漏らしたかわからない悲痛な叫びをあげた。



◇◇◇✼••┈┈┈┈••✼◇◇◇



ロイヤルフロアの庭園で、スコップを手に土をほぐす。

淡いグリーンの制服は、今は着ていない。汚れることを見越して、白いTシャツと黒いイージーパンツに着替えてある。

「なあ。それって、コンシェルジュの仕事か? 業者に任せればいいんじゃないのか?」

うしろに立っている白衣の男が、面倒くさそうに尋ねてきた。

なにもしないなら邪魔なのでどこかに行ってほしいと思いながらも、無下にはできず「はい」と答えた。

彼は現在この白薔薇で、もっとも若くて有望だと称される医師。コンシェルジュであるからには、良好な関係を築いておかなければならない相手である。この男を好きか嫌いかは、一旦端に置いておく。

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