天才外科医の密かなる執愛~傾国の微笑は運命を耽美に狂わせる~
麗しい顔ににやりと不敵な笑みが浮かぶ。

「わ、わかりましたから、もういいですから」

弱り切った声を出すと、さすがに冗談が過ぎたと気づいたのか、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。

「ごめん。体調の悪い人を相手にふざけすぎた」

そう謝ってマッサージに専念する。頬に触れていた手が下がり、肩と鎖骨のあたりを緩く押す。

筋肉がほぐれる気持ちのよさと、胸がドキドキ高鳴るような息苦しさが混じり合って、もうなにがなんだかよくわからない。

(なにより、至近距離で見下ろされているのが落ち着かない)

濡れた黒曜石のごとく輝く瞳が、じっと藍衣を見つめている。

目のやり場がない。かといって、目を瞑っている姿を見られるのも恥ずかしい。

「……あの。せめて顔を見ないでもらえませんか? いっそ、布をかけるとか。美容院のシャワーのときみたいに」

「いやだよ。藍衣が気持ちよさそうにしている顔が見たい――……じゃなくて、患者の顔を見て施術するのは、医師の基本だから」

(今、下心が激しく透けて見えた……!)

心の中で盛大なツッコミを入れつつも、善意も否定できず押し黙る。

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