さようなら、お別れしましょう
 そんな環境のせいか、ハリルは年齢よりも、ずっとしっかりしていた。

「レフィカ様を守るのが、おれの仕事ですからっ!」

 ハリルはキリッとした顔で、私に言った。
 ジェレンは頑張るハリルを見て、にこにこしていた。

「可愛らしいですわねぇ」
「子供扱いはしないでください!」
「え、でも子供……」
「ジェレン。ハリルは子供である前に、ジグルズ様の配下の一人です」

 ハリルは子供に見られるのを嫌う。
 ジグルズ様もそれをわかっていて、ハリルのプライドを尊重して、大人と同じように扱っていた。

「そうですね。ごめんなさい……」
「いえ! ジェレンさんもなにか困ったことがあれば、おれに言ってください!」
「ええ。ありがとうございます」
 
 私も母と暮らしていた頃は、母の足手まといになりたくなかった。
 だから、早く大人になりたいと思うハリルの気持ちがよくわかる。
 後宮の妃たちは、いつも争っていた。
 他の妃たちから嫌がらせを受け、じっと耐えている母を見ていた私は、母を困らせたり、面倒をかけたりしたくなかった。
 だから、自分のことは自分で解決しなくてはいけないと思っていたあの頃。
 母はもういないけれど、ハリルを見ていたら、そんな昔のことを思い出した。

「シャルク・ホジャという町は不思議ですね。賑やかな町だからか、私はここに来て、寂しいと思ったことがないんです」
「わかります。おれもシャルク・ホジャが大好きなんです! 窓から町の明かりがたくさん見えて、眺めているうちに眠くなるんです」
「公爵家は高台にありますからね。眺めがいいですよね」

 部屋の窓からは、運河と船、異国風の町並みが一望でき、眼下に美しい景色が広がっているのだ。
 いつまでも飽きずに眺められる。

「それでは、ハリル。役場の中へ入る前に、この列をなんとかしましょう」
「列を? どうやって……?」
 
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