さようなら、お別れしましょう
 ハリルはポカンとした顔で、私を見た。

「このままだと、通行の妨げになりますし、イライラした人が多いと、もめ事の原因になります」
「でっ、でも、待合室はいっぱいで……」

 ハリルは町役場の中にある待合室をちらりと横目で見る。
 椅子はぎゅうぎゅう詰めで、町役場の中にまで荷物を運び入れる人がいて、ぶつかって歩く始末。
 私とハリルが行列をなんとかしようと話していると、町役場の人たちがやってきた。

「王妃様、部屋にいていただいてもよろしいでしょうか?」
「やりたいことがあれば、王妃様の勝手になさってください。私たちは忙しく、これ以上、人の手を割く余裕がありませんので……」
「私たちは仕事で手一杯なのです。もてなせず、申し訳ありません」
「レフィカ様になんて口の利き方をするんだよっ……!」

 ハリルはそこまで言って、口をつぐんだ。
 私を見る役人たちの目が、冷たかったからだ。
 忙しさは心の余裕を奪って、ギスギスした雰囲気が漂っていた。

「毎日忙しいのに、王妃様の世話までやっていられない」
「猫の手も借りたいとは言ったが、王妃様をよこすなんて、ジグルズ様はいったいなにを考えているんだ」

 そんな声が聞こえてくる。
 そして、さっさと自分たちの業務に戻っていった。
 ハリルは泣きそうな顔で、私を見た。

「あ、あの……! レフィカ様、ベルクヴァイン公爵家の人間がこんな人ばかりだと思わないでください! いつもは優しい人たちなんです。忙しいせいで、余裕がないっていうか……」
「お邪魔をしているのは、私のほうです。忙しいのに、私のお世話までしていられませんよ。でも、好きにしてもいいと言われましたし、さっそくとりかかりましょう!」
「え? 勝手にしてもいいって言ってたけど、好きにしていいとは……」
「同じ意味ですよ!」
「そ、そうかなぁ……?」
 
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