さようなら、お別れしましょう
 先日、突然現れたイーザック様は、ジグルズ様に『王位を捨てた』と言っていた。
 奪われたのではなく、捨てた。
 ジグルズ様の意思で王にならなかったということだ。
 
 ――いったい、どうして……?

「さて、レフィカ。一緒に昼食でもどうだろう?」
「……ええ。ありがとうございます」 

 とても親切で人望があるジグルズ様。
 だけど、その裏にはなにか秘密がある。
 弟のイーザック様から侮辱され、嫌われても構わないと思うほどの理由が隠されている。
 気になっていても、私はジグルズ様には尋ねることができなかった。
 周囲には人が大勢集まっているし、『二人になりたい』なんて言えば、前回のように誘ったなんて、思われる。

 ――浮気は死。

 もし、ジグルズ様があの時、勘違いしたままだったら――

「レフィカ、顔が赤いぞ?」
「ひえっ!」
「なぜ、驚く?」
「い、いえ……。ちょっと考え事を……」

 ジグルズ様がどんなにいい人だとしても、私は好きになったり、ときめいたりしてはいけない。
 それは、ジグルズ様だけでなく、誰であっても私は恋することはできない。
 私の心臓には、死の【契約】が刻まれているのだから。


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