さようなら、お別れしましょう
 その一方で、令嬢たちはわたくしより自由で婚活中。
 サロンやパーティーなどに出入りし、常に最新の情報を手に入れ、素敵な男性をつかまえようと必死だ。
 だから、わたくしが知らないことも知っている――
 
「噂によると、レフィカ様は王都にいらっしゃらないようですわ」
「いないですって!?」

 イーザック様はレフィカ様にお屋敷を用意した。
 そこで侍女たちと暮らしていると、イーザック様から聞いていた。

「王都からお引っ越しされたそうですよ」

 ――引っ越し!? いつの間に!?

 イーザック様は知っているはずなのに、わたくしに教えてくれなかった。
 なぜ、わたくしに秘密にしたの?
 冷静を装って、令嬢たちに尋ねた。

「……レフィカ様はどちらにお引っ越しされたのかしら?」
「そこまではまだ……。お屋敷に誰もいなくなったので、警備の兵士に尋ねたところ、引っ越したとだけ教えていただけましたわ」
「メリア様が陛下から愛されているのが辛くて、きっと遠くへ引っ越されたのでしょうね」

 言われなくても、イーザック様に愛されてるのは、わたくしだけとわかっている。
 わかっているけれど、この間、イーザック様は視察だと言っていたのを思い出してしまった。

 ――レフィカ様に会いに行ったのではなくて?

 雲が太陽を隠し、明るかった回廊は一瞬で暗くなった。
 太陽が雲から顔を出し、床に伸びた自分の黒い影。
 令嬢たちはなにか話していたけれど、イーザック様の浮気疑惑で頭がいっぱいだった。
 だから、令嬢たちがざわついているのに、気づくのが遅れた。

「あの、メリア様……。お茶会の会場はこちらでよろしいのかしら……?」 
「こ、こちらのお庭はいったい……」

 動揺した令嬢たちの目の前に広がっていたのは、花を切り落とされ、茎だけになった姿――花が枯れ、なにもない庭だった。
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