さようなら、お別れしましょう
「メリアはレフィカが正妃でも構わないから、妃にしてくれと言っただろう? 俺の気持ちがあれば、それで満足だと」
 
 俺の心はメリアにあるというのに、レフィカに嫉妬したようだ。
 メリアは恥ずかしそうに頬を赤らめてうつむいた。

「ええ。イーザック様の愛がわたくしの元にあれば、じゅうぶんですわ」

 彼女はこちらが想像した通りの答えが返ってくるため、扱いやすい。
 予想外の態度だったのは、レフィカだ。

 ――夫から別居を告げられたんだぞ。少しは悔しそうな顔をしたらどうなんだ?

 振り向きもせずに去られ、こっちが捨てられたような気分になった。
 今日、初めて彼女の顔をはっきりと見た。
 結婚式の時の彼女はヴェールをかぶっており、周囲には大勢の人間がいた。
 それもあって、お互いなにも話さなかった。
 婚約の時は、ドーヴハルク王国から代理人が現れた。
 なんでも、ドーヴハルク王家のしきたりで、王女は結婚するまで男性の前に姿を見せてはいけないらしい。
 ドーヴハルク王家では、生まれた王女たちを後宮に閉じ込め、国から一歩も出さない。
 その理由は簡単だ。

『ドーヴハルク王家の王女は、政治の道具に使える』

 成人して嫁ぐまで、変な男にひっかからないよう後宮で閉じ込めて管理する。
 ドーヴハルク王国は北の小国だが、侮れない。
 多くの国と同盟を結び、自国の領土を守ることに成功しているからだ。
 歴史上、ドーヴハルク王国側から一度も同盟を破ったことがない。
 破れば、【契約】の力によって、嫁がせた娘の心臓が止まり死ぬ。
 そして、国々からの信用を一瞬で失う。

『ドーヴハルク王国側から、絶対に同盟を破らない』

 その信用があるからこそ、この政略結婚を承諾した。
 簡単に破られる同盟であれば、俺は信用しなかっただろう。
 
「命がけの政略結婚。逃げられない【契約】か……」

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