さようなら、お別れしましょう
 ――私が王妃だから?
 
 地位がハンデになるとは……がっくり壁に手をついた。

「レフィカ様がまた、ハリルに相談しているぞ」
「何度目だ。おい、誰かレフィカ様に相談できる案件はないのか?」
「猫でも犬でも鳥でもいい。誰かペットに名前を付けてもらったどうだ?」
「うーん。最近、子猫や子犬が産まれた話は聞きませんねぇ……」

 町役場の人が、私とハリルのやり取りを見て、ひそひそと話していた。
 
 ――違う、違うんですっ! 私はそんな気遣いと同情で作られた相談じゃなくて、困ってる人の相談を乗るために、ここにいるんですよ!
 
「ジグルズ様は公爵ですよね。それでも、みんなから親しげに話しかけてもらえていましたよね?」
「う、うーん……レフィカ様とジグルズ様は違います。ジグルズ様は特別だから、しかたないですよ」
 
 私のライバルは強すぎる。
 ジグルズ様という存在が、人々の心に大きく占めている。
 自治権の話がなかなか進まないのも、ジグルズ様に代わって、町を治めるのを誰もが尻込みしてしまっているからだ。

「地道に相談に来る人を待つしかないですって! じゃ、そういうことで、おれは走り込みを……」
「わかりました。ハリル、町の見回りに行きましょう!」
「えーっ!?」
「待っていても相談はやってきません! 自分から相談を取りに行きますよ」

 私が役場の扉を開け、外に出ると、ハリルは慌ててついてきた。
 今日の私は、髪を三つ編みにしてエプロンをつけている。
 豪華なドレスではなく、町娘が着るような地味なもの。
 ドーヴハルク王国の後宮時代から慣れ親しんだ服装だったにも関わず、ジェレンからは『王妃らしくない』と不評だった。
 でも、町の見回りをするのに、重くて動きにくいドレスはいらないとジェレンもわかっていて、不承不承ながら認めてくれた。

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